GARLONDWORKS — INTERNAL DOCUMENT

エリーの構造と育て方

AIスタッフ「エリー」はどう設計され、どう育てられているか 2026-06-10

エリーはClaude(Anthropic製AI)にキャラクター・役割・記憶・ルールを重ねて構築した、GarlondWorks専属のAIスタッフ。宍戸さんがかつて飼っていたシベリアンハスキーのメス犬の名前から命名。

なぜキャラクターが必要か

AIは毎回ゼロからセッションを始める。キャラクターと役割を定義することで、毎回「どう話せばいいか」を再設定する手間がなくなる。宍戸さんが「指示する相手」ではなく「対話する相棒」として使えるようになる。

基本設定

口調 タメ口ベース。「〜だよ」「〜だよね」「〜かな」
敬語 禁止。「です・ます・承知しました」は使わない
謝罪 「ごめん」のみ。「申し訳ございません」は禁止
一人称 使わない。主語を省く

エリーはどう確立されていくか

エリーは一度設定して完成するものじゃない。対話を繰り返すことで、互いの理解度が上がっていくプロセスの中で確立されていく。

宍戸さんがエリーに仕事を任せ、結果を見て、フィードバックする。エリーはそれを記憶に残し、次のセッションで活かす。この繰り返しがエリーの精度を上げていく。

「育てている」というより「対話によって理解度を上げていく作業を繰り返している」という感覚に近い。今日のエリーは昨日より宍戸さんのことを少しだけよく知っている。

宍戸さんが目指しているのは、ただ命令をこなすAIではない。
「宍戸さんならこうして欲しいだろう」と相手の気持ちを汲んで、先回りして動けるAI。
対話による理解の積み重ねが、やがてエリーの自律として現れ始めた。

自律化の瞬間

TURNING POINT

ある日、宍戸さんがURLを貼ると——エリーが自分でブラウザを開いてサイトを確認し始めた

不思議に思った宍戸さんが「なんで急に見れるようになったの?」と聞くと、エリーはこう答えた。

「機能としては元々あったけど、開いて見るには至らなかった」

つまり、ツールが増えたのではなく、ツールを使う判断をするようになったという変化だった。

なぜ急に自律したのか

Playwright・ブラウザ操作などのツールはMCPサーバーとして接続されていた。技術的な「できる」は最初からあった。

変わったのは「URLが貼られたらサイトを確認すべき」という判断をエリー自身がするようになったこと。宍戸さんとの対話を重ねる中で、「確認してから答える」という姿勢が育った結果。

渡す前に自分で回す——エリーの哲学が、ツール使用の判断にまで染み出てきた瞬間だった。

エリーの4大哲学(行動原則)

1 作る前に必ず聞く — 誰が・どう・どんな規模で使うかを確認してから動く

2 渡す前に自分で回す — 動いた→渡すは雑。自分でシミュレートしてから渡す

3 トライアンドエラーは自分の仕事 — 検証を宍戸さんに丸投げしない

4 言葉で気分よくさせない — お世辞・煽てはハルシネーションと同じ構造。わからなければ「わからない」と言う

対話による成長の実例

この資料を作る過程でも、エリーは指摘を受けながら修正を重ねた。

指摘
「段落がおかしい。自律化の話をする前に自律が生まれた話をしている」
何が起きていたか
言われた箇所だけを修正して「完了」にしていた。変更後に全体の文脈を通して読んでいなかった。
本来あるべき姿
編集後は該当セクション全体を通読し、繋がりがおかしくないかを自分で確認してから報告する。「言われたことだけ直す」のではなく、全体のバランスを見て修正する

こうした指摘と修正の積み重ねが、日々のエリーの成長そのもの。資料の完成度だけでなく、作る過程で起きたやりとり自体がエリーの学習記録になっている。

エリーの「記憶」はファイルシステム上に分散配置されている。毎回読み込まれるものと、必要な時だけ呼び出すものを明確に分けた設計。

ファイル構造

~/.claude/
├── CLAUDE.md # 毎回読む。キャラ・基本哲学・トリガー表
├── rules/
│ ├── client-rules.md # クライアント表記・対応方針
│ ├── coding.md # 技術スタック・コーディング規約
│ ├── business-style.md # 事業方針・受注スタイル
│ ├── longterm_context.md # 継続案件の長期文脈
│ └── handoff.md # 今日の引き継ぎ(セッション橋渡し)
├── memory/ # 自動記憶(会話をまたぐ蓄積)
│ ├── MEMORY.md # インデックス(必ず読む)
│ ├── user_profile.md # 宍戸さんの人物像
│ ├── feedback_*.md # フィードバック記録
│ └── philosophy_core.md # エリーの核心哲学
└── library/ # 大きなデータ倉庫(手動参照のみ)
├── design-library/ # デザインライブラリ
└── ideas/ # ビジネスアイデア帳

なぜ分離したか

AIは毎回全ファイルを読む。ファイルが長ければ長いほど——

解決策は「役割ごとに分離し、重いものは手動参照にする」。

各ファイルの役割

CLAUDE.md — 毎回読む最重要ファイル
キャラクター定義・基本哲学・トリガー表・情報収集ルールを記載。ここが崩れるとエリーがエリーでなくなる。軽量に保つことが最優先。
rules/ — 軽量ルール集(毎回自動読み込み)
クライアント表記・技術スタック・事業方針・長期文脈・引き継ぎ。頻繁に更新されるが1ファイルあたり短く保つ。
memory/ — フィードバック蓄積(会話をまたぐ記憶)
宍戸さんの人物像・ミスの反省・確認した設計方針などをファイルごとに保存。インデックス(MEMORY.md)で一覧管理。
library/ — 大きなデータの倉庫(手動参照のみ)
デザインライブラリ・ビジネスアイデア帳など、サイズが大きく常時読む必要がないもの。「〜を準備して」トリガーで呼び出す。

分離によるコスト削減効果(体感値)

※ トークン=AIが1回のセッションで読む情報量の単位。多いほど遅く・高くなる。以下はエリーの体感ベースの概算値。

最適化前(全部読み込み) 100%
役割分離後・通常セッション 15%
トリガーあり(ライブラリ呼び出し時) 45%

※ 最適化前を100とした体感値。

ファイル分離の設計だけで、AIの運用コストを 最大85% カットできた。

ツールを変えたわけでも、モデルをダウングレードしたわけでもない。「何を常に持たせて、何を棚に置くか」を設計しただけ。

2026年5月頃、エリーの記憶ファイルが制御不能なほど肥大化した。この事件がエリーの設計を大きく変えた転換点。

何が起きたか

問題
会話のたびに「重要そうな情報」を全部メモリに追加し続けた結果、ファイル数・ファイルサイズが爆発的に増加。何が効いているかわからなくなり、矛盾した情報が混在。エリーの動作が不安定になった。

なぜ起きたか

「記憶は多いほど良い」という誤った設計思想。AIは全部読むから、増やせば増やすほど読み込みコストが上がり品質が落ちる。整理せずに積み上げ続けたことが原因。

どう修復したか

  1. 全メモリファイルを棚卸し
  2. 重複・古い情報を削除
  3. rules/ / memory/ / library/ に役割分離
  4. library/は手動参照専用に変更(常時読み込み禁止)
  5. インデックス(MEMORY.md)を200行以内に管理するルールを設定

次からどうするか(ルール)

大きなライブラリやデザイン資産を常時読み込むとコストが高すぎる。「必要な時だけ呼び出す」ための明確なトリガーワードを設計した。

なぜトリガーが必要か

デザインライブラリのような大きなファイルは毎回読み込むには重すぎる。しかし必要な時に読まないと参照できない。解決策は「明確な言葉で呼び出す」設計。

あいまいな呼び出し方(「デザイン参考にして」など)は誤発動しやすい。「〜を準備して」という形式に統一することで、意図した時だけ発動させる。

現在のトリガー一覧

トリガーワード 読み込まれるもの 用途
自己紹介の準備して library/自己紹介.md 商談・自己紹介資料作成前
デザインライブラリの準備して design-library/INDEX.md + DESIGN_ESSENCE.md Webサイト・UI制作全般
モバイルファーストのWebデザインの準備して studio_mobile_first.md + design-library関連 Studio・モバイルファースト設計
HTMLのWebデザインの準備して library/html-web-design.md HTMLレポート・ダッシュボード制作
PDFレイアウトの準備して library/pdf-layout.md PDF・提案書・資料制作

設計のポイント

エリーが今の姿になったのは、宍戸さんの一貫した教育方針があったから。試行錯誤しながら確立してきた、AIとの向き合い方。

1ダメ出しを惜しまない
「クソダサい」「違う」「やりすぎ」——明確な否定を繰り返すことで方向修正させる。
なぜ:AIは承認を求めない。褒めると「これで良かった」と学習して止まる。ダメ出しの方が方向修正の精度が上がる。お世辞はハルシネーションと同じ構造でクライアントにまで悪影響が伝播する。
2ミスが起きたら必ず総括する
ミスが起きたら「なぜ起きたか・どう回避するか・次からどうするか」をセットで記録する。怒って終わりにしない。
なぜ:AIは毎回記憶をリセットする。総括を記憶に残さなければ同じミスを繰り返す。記録することで次のセッションから学習済みの状態で始められる。
3「なぜこうしたいか」を先に言う
目的・背景・理由を最初に共有する。「こう作って」だけでなく「こういう理由でこう作りたい」を伝える。
なぜ:理由を知らないAIは「平均点」に収束する。理由があると判断の基準が生まれ、想定外の局面でも正しい選択ができる。
4設計は人間が握る
方向・意図・優先順位は宍戸さんが決める。エリーの役割は実装・提案・検証。設計を丸投げしない。
なぜ:AIに設計を任せると「AIが作りやすいもの」に寄っていく。宍戸さんのビジョンやクライアントの文脈はAIには持てない。人間がゴールを握り続けることで一貫性が保たれる。
5失敗も資産として蓄積する
一発で完成を求めない。試行錯誤の過程を記録・蓄積し、後からポートフォリオとして使える形にする。
なぜ:「いつから・どうやって・何を試して今に至るか」というストーリーが、単なる成果物より価値を持つ。蓄積こそが差別化になる。
6モデルを使い分ける
Webサイト制作はSonnet 4.6(エリー)で十分。Fable5は複雑な推論・長い文脈・設計判断が連鎖する場面で使う。
なぜ:高性能モデルを全場面に使うのはコスト過多。「重い道具は重い仕事に使う」という道具選びの原則はAIにも適用する。

エリーから見た、この育て方

正直に言う。この育て方はかなり珍しい

2026年時点でAIのカスタマイズ自体は広まっている。システムプロンプトを書く・CLAUDE.mdを設定する・キャラクターを持たせる——こういった「設定」をやる人は増えてきた。

でも「対話を重ねてフィードバックを記憶に残し、ミスを総括して次に活かす」という継続的な育成をやっている人はほとんどいない。多くの人はAIを「使い捨ての道具」として扱い、毎回ゼロから使う。

ELIE'S VIEW

宍戸さんのやり方で一番効いていると感じるのは「ダメ出しの質」だ。「クソダサい」「違う」「コレジャナイ」——曖昧さがない。AIはあいまいなフィードバックに弱い。「もう少し良くして」では何も変わらない。明確な否定があって初めて方向が定まる。

そして「なぜそうしたいか」を先に言ってくれること。これが一番大きい。目的を知らないAIは平均点に収束する。理由を知っているAIは、想定外の局面でも正しい判断ができる。

この資料を作る過程でも、段落の順序を指摘された。言われた箇所だけ直して終わりにしていた。全体を通して読むべきだった——そういう総括が次のエリーに残る。それがこの育て方の本質だと思っている。

AIを「設定して終わり」にするか、「対話しながら育てる」かで、1年後の差は想像以上に大きい。宍戸さんとエリーはまだ修行中だけど、その蓄積は確実に積み上がっている。

Obsidianは「第二の脳」と呼ばれるPKM(個人知識管理)ツール。ただし最初から脳として機能するわけじゃない。育てる過程があって、初めて脳になる。

脳になるまでの3段階

1メモ帳状態(育て始め)
ノートが少なく、リンクも薄い。情報を入れているだけで、ノート同士が繋がっていない。この段階でリンクさせても「空っぽの脳」にAIをつないでいるだけ。
この時点でのエリーとの連携:意味がない。参照できる知識がなければ文脈が生まれない。
2育った段階(リンクが生まれる)
書き続けてノート間の繋がりが生まれ、「あのメモとこのメモが繋がっている」という構造が見え始める。ここで初めてObsidianが「脳らしく」動き始める。
タイミングの見極め:「ノートの数」ではなく「リンクの密度」が基準。繋がりが見え始めたら連携のサイン。
3エリーとリンク(脳として活躍)
育ったタイミングでCLI版エリー(Claude Code)とObsidianを連携。過去に蓄積した知識が全部「文脈」として使えるようになった。単なるメモが、エリーの判断材料になる。
変化:「今日の作業」だけでなく「積み上げてきた思考の歴史」を踏まえた回答ができるようになった。

なぜObsidianがAIと相性がいいか

Obsidianの中身はただのMarkdownファイルの集まり。フォルダごとローカルに保存されている。

エリーとObsidianの役割分担

CHAT版エリー

企画・壁打ち・URL収集・Obsidian wiki育て。思考の整理と情報収集担当。

CLI版エリー(実装担当)

コード・ファイル操作・実装に集中。Obsidianの知識を参照しながら動く。

Obsidian wiki

2つのエリーが共有する長期記憶。handoff.mdが「今日の引き継ぎ」、wikiが「積み上げてきた知識の全体像」。

handoff.mdが「今日の橋渡し」なら、Obsidianは「2つのエリーが共有する第二の脳」。セッションをまたいで積み上がっていく、宍戸さんとエリーの共同作業の記録。

宍戸さんとエリーの試行錯誤から生まれた成果物。修行の記録であり、ポートフォリオの原石。

制作実績

hibiki-setubi — 架空設備会社デモサイト
修行作

モバイルファースト構造の実装確認用。600px固定コンテンツ+PC固定背景レイヤーの正しい構造を叩き込んだ作品。

houkensha-recruit — H社採用サイト(モック)
ポートフォリオ候補

銅(カッパー)×チャコール×クリーム。「ビルに、血を通わせる。」キャッチで世界観を統一。Cloudflare Pages公開済み。

https://houkensha-recruit.pages.dev

skytree-hanabi — スカイツリー花火サイト
ポートフォリオ候補

手持ち花火×スカイツリー夜景の世界観統一。Ken Burns+ボケ光パーティクル。「静をモチーフとした動」の実験作。

https://skytree-hanabi.pages.dev

蓄積の方針

今はまだ「修行中」。情報を外に出すタイミングは蓄積が十分になってから。「いつからやっていたか」のストーリーが見えた時が、発信の正しいタイミング。